キャメスのブラッシュアップで思ったこと最終
「でも」は抵抗ではなく、大切な情報かもしれない
カウンセリングでは、本人が「でも……」と言ったとき、それを抵抗として捉えることがある。
もちろん、本当に核心に触れそうになって抵抗が出ることもあると思う。
でも、すべての「でも」が抵抗とは限らない。
もしかすると、その「でも」は、
「今のあなたの解釈、私の感覚とは少し違います」
という本人からの大切な情報かもしれない。
だから私は「でも」が出たとき、突破するのではなく、一度止まれる人でいたい。
「今、“でも”って出たね」
「私が言ったことの、どこまでは合ってた?」
「どこから違った?」
「全部違う? 一部分だけ?」
「あなたの言葉に直すなら、どうなる?」
その違和感を、さらに細かくしてみたい。
私はカウンセラーが持つ心理学の知識や理論は、その人を理解するための大切な補助線だと思っている。
でも補助線がいつの間にか答えになってしまったら、
本人の物語より、カウンセラーの物語の方が強くなってしまう。
それは避けたい。
過去は「目的地」ではなく「必要なら通る道」
だから私は、インナーチャイルドを否定したいわけではない。
必要な人には、とても大切な方法だと思う。
ただ、全員がそこへ行く必要はないと思っている。
まず現在から始める。
今、何が起きているのか。
何が嫌なのか。
どこまでは大丈夫なのか。
どこから苦しくなったのか。
一つの違和感を、本人と一緒に細かく切り分けていく。
そして自分自身が明確になったことで、
「私はこうしたい」
と選べるようになったのなら、そこで終わってもいい。
それでもまだ、
「分かっているのに選べない」
が残るなら、
「これ、もう少し前から続いている感じはある?」
と時間軸を広げてみる。
そこで本人が「ある」と感じたなら、一緒に過去へ行けばいい。
過去は、カウンセリングを受ける全員が辿り着かなければならない目的地ではなく、
今の自分を理解するために、必要になったときに通る探索ルートの一つ。
私はそんなふうに考えている。
私がカウンセリングで取り戻したいもの
私がカウンセリングで目指したいのは、
「傷のない人間に戻すこと」ではない。
そもそも、そんな人間はほとんどいないと思う。
傷ついたこともある。
失敗したこともある。
誰かに合わせて生き延びた時期もある。
その経験によって身につけたものの中には、もう必要のないものもあれば、今では本人が大切にしているものもある。
だから過去を全部ひっくり返して「本来の自分」に戻るのではなく、
今の自分に何が起きているのかを明確にして、自分の意思で選べる範囲を増やしていく。
私はそこを大切にしたい。
そして不思議なことに、現在の自分を丁寧に理解することで、過去まで救われることもあると思う。
「あの頃の私は弱かったから、人に合わせていた」
と思っていた人が、
「あの頃の私は、あの環境の中で関係を壊さないために一生懸命調整していたんだ」
と思えるようになる。
過去の出来事は何一つ変わっていない。
でも、過去の自分を見る目が変わる。
それもまた、一つの「癒し」なのかもしれない。
私にとってカウンセリングの深さとは、どれだけ遠い過去まで辿り着いたかではなく、
その人が自分自身を、どこまで高い解像度で理解できたか。
そして最後に、
「じゃあ私は、どうしたい?」
を本人に返せること。
答えを書くのは、カウンセラーではない。
その人の物語の作者は、最後までその人自身なのだから。
